文字:

20121113T_0

SYSTEM >  様が入室しました。 (11/13-23:06:11)
  : ――邪教徒の集団の拠点襲撃後の夜。 (11/13-23:09:52)
  : 〈皆朱の矛槍亭〉は、襲撃に一役買った冒険者たちが小さな祝宴を開いて、賑やかな一夜が送られていた。 (11/13-23:11:03)
  : 一方で、その冒険者集団の一人であった少女は、1人〈黄金の林檎亭〉を訪れていた。 (11/13-23:11:35)
  : いつの間にか、日付は変わり、他に客の姿は見当たらない。 (11/13-23:12:08)
ヒルダ : 「……本当に大丈夫?」 〈黄金の林檎亭〉の店主は、夜更けに急に訪れたその日最後であろう客に声を掛ける。 (11/13-23:13:12)
シェリー : 「……平気です。それよりも、すみません。……こんな夜更けに、急に押しかけてしまって」 少女は机に伏せながら、顔を少しあげてその声に応える。 (11/13-23:15:08)
ヒルダ : 「それはいいの。私も明日の為にまだしないといけない事があるから、しばらくは此処に居るし、ね」 (11/13-23:16:22)
ヒルダ : 「……随分顔色が優れないように見えたけれど、何かあった?」 (11/13-23:16:51)
シェリー : 「……いいえ、何もありません。アーロンさんの所で請けた依頼も、滞りなく完了しました。……ヒルダさんなら、もう聞いているんでしょう」 (11/13-23:17:27)
ヒルダ : 「一応は、ね。あなたみたいな若い子たちばかりみたいだったから、少し心配だったけれど、誰も大怪我をすることなく戻って来てくれて良かったわ」 (11/13-23:18:30)
シェリー : 「……相手側の1人は、命を落としましたけどね」 (11/13-23:19:20)
ヒルダ : 「……ええ、それも聞いている。けれど、それは貴女が気に病む事ではないわ」 (11/13-23:20:26)
シェリー : 「……いえ、別に、その事を気に病んでいる訳では」 (11/13-23:20:40)
ヒルダ : 「……そう」 (11/13-23:21:37)
ヒルダ : 「私は、そろそろ明日の準備をしなければならないから奥へ引っ込むけれど、此処は好きに使ってくれていいから」 (11/13-23:22:34)
ヒルダ : 「それと、2階の奥の部屋、空けておくわね」 (11/13-23:22:49)
シェリー : 「……すみません」 カウンターの奥へと去っていく女将の背中に小さく告げて、再び腕を枕にテーブルに突っ伏す。 (11/13-23:23:36)
シェリー : 「……冒険者なら、もっと普通になれると思ったのに……」 空のグラスを虚ろな眼差しで見つめながらぼやく。 (11/13-23:25:40)
シェリー : 「それどころか……」 先日から立て続けに、自分の異常さを自覚させられるような依頼が続いている。 (11/13-23:26:41)
シェリー : 「…………」 身体をゆっくりと起こして、両手を眺める。ぼやけて見えるのは、普段飲まないアルコールを大量に摂取したからだろうか。 (11/13-23:28:28)
シェリー : 「いや……」 力なく首を横に振る。この身体は、そう簡単にアルコールに影響を受けたりしない。 (11/13-23:29:05)
シェリー : 歪んで見えるのは、きっと記憶のせいだ。かつて自分の身に実際に起こっていたことだからこそ、あの一時的な変化が、こんなにも鮮明に記憶に残ってしまう。 (11/13-23:30:14)
シェリー : 「……悪夢は、終わったんじゃなかったんですか……」 漏れた言葉は、記憶の中にある人物には届かない。 (11/13-23:32:02)
シェリー : 問いかけに答える者は居らず、周囲にはただ静寂が満ちる。 (11/13-23:33:57)
シェリー : 「…………」 此処へ来たのは、正解だった。カウンターの奥から漏れる微かな光と人の気配が、どうにかまだ世界と繋がりを保っているという証拠に思えるから。 (11/13-23:36:23)
シェリー : けれど、世界に溶け込もうとすればする程、こうしてまた孤独を感じる事になる。答えを探せば、答えが遠ざかる。 (11/13-23:39:34)
シェリー : 「……見つかりっこ、ないですよ……」 (11/13-23:40:12)
シェリー : 無意識の内にぎゅ、と拳を握ると、目尻にはじわりと涙が滲み始める。 (11/13-23:42:55)
シェリー : 「……」 誰かに見られるはずもないのに、顔を腕に押し付けるようにして涙を隠す。 (11/13-23:43:25)
SYSTEM >  様が入室しました。 (11/13-23:45:18)
  : とん とん とん (11/13-23:45:47)
  : 階上から、ベッドの中の人々を気遣うような、控えめな足音。 (11/13-23:46:34)
シェリー : 「……っ」 びくり。どんな時だって、物音や人の気配には異常なまでに敏感になってしまっている。ば、と顔をあげて、目尻を急いでこする。 (11/13-23:46:34)
: 「……あら?」 (11/13-23:47:33)
シェリー : 「……」 ああ、そうか。外からは誰も来なくたって、中からは現れる可能性はあるんだ。そんな当たり前の事に今更気づいて、少しだけ呆けた顔をした。 (11/13-23:48:21)
シェリー : 「…………」 ぺこ、とバツの悪そうに小さく頭を下げる。 (11/13-23:48:41)
: 「奇遇ですね、こんな夜更けに」 そう言いつつ、あっさりと隣の席に座る。 (11/13-23:48:53)
: ランプの油がもったいないですからね、と。 (11/13-23:49:18)
シェリー : 「……え、ああ……そう、ですね」 突然隣に座った相手に驚くが、それ以上に、泣いていた事に気付かれたくない。平静を装って答える。 (11/13-23:50:12)
: 「……」 数瞬、じっと見つめ 「初対面の方に、このようなことをお聞きするのは礼を失するかもしれませんが……」 (11/13-23:51:26)
: 「何か、悲しいことでも?」 (11/13-23:51:45)
シェリー : 「……何ですか?」 (11/13-23:51:45)
シェリー : 「……コレを見ても、そう思いますか?」 す、と手を広げて示して見せたのは、テーブルに転がるグラスに酒瓶。 (11/13-23:52:44)
: 「お酒には、大きく2つの飲み方があります」 (11/13-23:53:24)
: 「1つは嬉しいとき。もう1つは、悲しいとき」 (11/13-23:53:36)
: 「前者であるようには、見えなかったものですから……違ったなら、お詫びします」 と言いながら、もう頭を下げている。 (11/13-23:54:12)
シェリー : 「……謝らないでください。……多分、別に間違ってはいませんから」 渦巻く感情の中には、恐らく悲しみも含まれている。 (11/13-23:55:14)
: 「……どうでしょう」 (11/13-23:56:11)
: 「少し、吐き出してみませんか?」 (11/13-23:56:36)
: 「それで楽になることも、世の中には多いものです」 (11/13-23:56:56)
: 「あ、聞くだけ聞いたらきちんと忘れますから、安心してください」 度数の高い酒を拝借して言うと、にっこり笑う。 (11/13-23:57:35)
シェリー : 「…………」 初対面の相手に吐き出す言葉なんて無い、と言おうと考えるが……逆に、そういう相手だからこそ、言えることなのかも知れない。 (11/13-23:57:58)
: 「行きずりの相手なら、気を遣うこともありませんしね」 (11/13-23:58:07)
シェリー : 「……そうですね。……丁度、わたしもそう考えていました」 (11/13-23:58:22)
: 「無責任、と言えなくもありませんが」 とは、さすがに微苦笑。 (11/13-23:58:30)
シェリー : 「……こんな時間なのに、よく喋る人ですね」 (11/13-23:58:54)
: 「不思議と、今夜は眠くないものですから」 (11/13-23:59:32)
: 実は魔動機獣と一戦交えた当夜だったりしますが。 (11/14-00:00:12)
シェリー : 「……そうですか」 小さく答えると、両手を足の上で組んで、テーブルの上を見ながらふと話し始める。 「……ちょっとした、悩み事です」 (11/14-00:00:57)
シェリー : 同日だったのか。>まどうきじゅう (11/14-00:01:13)
シェリー : 「ただ、普通に生きるのは難しいという……それだけの話です」 (11/14-00:01:40)
: 「普通に、ですか」 (11/14-00:01:49)
シェリー : 「わたしたちのような年齢の者が冒険者になる理由は、大きく分けて2つあると聞きます」 (11/14-00:02:02)
: 思わぬ意趣返しだ。拝聴しよう。 (11/14-00:02:47)
シェリー : 「ひとつは、冒険者という職業に夢を見て、まだ見ぬ世界に思いを馳せたから。もうひとつは、それ以外に居場所をなくしてしまった、最後の逃げ場として冒険者を選んだから」 (11/14-00:03:35)
シェリー : 「わたしがどちらかは……まぁ、言うまでもありませんよね」 こんな瞳に、まっとうな夢など映るはずがない。 (11/14-00:04:21)
: 「前者」 (11/14-00:05:11)
: 「前者、ですよね?」 (11/14-00:05:23)
シェリー : 「……どうしてそう思うんですか?」 まさかそちらが選ばれるとは思っていなかった。初めて相手の顔を見て、問う。 (11/14-00:06:02)
: 「普通に生きるという夢を見て、まだ見ぬ普通の世界に想いを馳せたから」 (11/14-00:06:35)
: 「――違いますか?」 (11/14-00:06:44)
シェリー : 「……物は言いようとは、この事ですね」 (11/14-00:07:26)
: 「今のはただの言葉遊びですが、同時に1つの真理を示してもいると、私は思います」 (11/14-00:08:07)
: 「結局は、1枚の銀貨の表と裏なのだ、と」 (11/14-00:08:50)
: 「言い方1つ、見方1つで、いかようにもなるものだと」 (11/14-00:09:19)
シェリー : 「……わたしの言った前者も後者も同じだ、と?」 (11/14-00:09:20)
: 「私には、そう聞こえました」 (11/14-00:09:59)
シェリー : 「……それはきっと、あなたが良い人だからでしょうね」 (11/14-00:10:48)
: 「良い人……」 (11/14-00:11:16)
シェリー : 「……わたしには、そんな肯定的には捉えられません。冒険者は、わたしにとって最後の逃げ場でしかないんです」 (11/14-00:11:39)
: 「本当に良い人だったら、よかったのですけれどね」 (11/14-00:12:36)
: 「また質問になってしまいますが、いったいどうして冒険者に?」 (11/14-00:13:15)
シェリー : 「…………見知らぬ他人に声を掛けて、わざわざ愚痴を聞くのは、良い人以外のなにものでもないと思いますよ」 (11/14-00:13:24)
シェリー : 「わたしは、先に言った後者です。それ以外の居場所を、失ってしまいました」 (11/14-00:13:47)
: 「……そのお言葉は、ありがたく頂戴しておきます」<他の何者でもない (11/14-00:14:16)
シェリー : 「逃げて来た先が、冒険者です。……その最後の逃げ場でさえ、疎外感を感じてしまっていますが」 (11/14-00:14:44)
: 「そこは、あなたにとって今より居心地の良い場所だったのですか?」 (11/14-00:14:45)
シェリー : 「……そこに居る当時は、とても居心地の良い場所だと信じていましたよ。……今では、其処以上に不快な場所は無いと思っていますが」 (11/14-00:15:51)
: 「そう聞くと、やはり逃げたのは“正解”だったように思えてしまうのは、私だけでしょうか?」 (11/14-00:17:20)
シェリー : 「……間違った答えではなかったのは、確かだと思います。でも……正しい答えなのかどうかは、分かりません」 (11/14-00:18:12)
: 「……そうですね、性急すぎました」 (11/14-00:18:48)
: 「それが正しかったかどうかは、今後によって決まることでしょうから」 (11/14-00:19:10)
シェリー : 「……正しいと思える自信が、無いんです」 (11/14-00:20:06)
シェリー : 「……今日、いえ、もう昨日ですね。わたしと一緒に仕事に出た人たちは、別のお店で、成功を祝して小さなパーティを開いていました」 (11/14-00:20:57)
: 「……」 どうして1人だけここに? とは問わない。 (11/14-00:21:27)
シェリー : 「わたしには、それに参加しようという気持ちは、これっぽっちも湧いて来ませんでした。……仕事中も、彼らのような“普通”の人たちとの違いを、思い知らされるばかりで」 (11/14-00:21:46)
: 「どう違うのですか?」 さらりと、しかしとんでもない問いかけ。 (11/14-00:23:12)
: 相手に対する無遠慮ではない。返ってくるであろう恐ろしい答えへの無防備。 (11/14-00:24:04)
シェリー : 「……言いたく、ありません。……言えば、わたしはより強くそれを自覚してしまう」 (11/14-00:24:44)
: 「聞く用意が出来ていても、言う用意が出来ていないのでは、致し方ありませんね」 残念そうに、困ったように、眉を八の字にして微笑む。 (11/14-00:28:40)
シェリー : 「……すみません。流石に、初対面の相手に言う事でも無いんです」 (11/14-00:30:01)
: 「言われてみれば、私も、私と皆さんの“違い”を進んで語りたいとは思いませんしね」 (11/14-00:30:10)
シェリー : 「……特に、あなたのような人の良さそうな人には」 (11/14-00:30:11)
: 「人の好さそうな人」 (11/14-00:30:40)
: 「……そうですね、その評価が一番しっくり来ます」 (11/14-00:31:05)
シェリー : 「……別に、本当は腹黒いとか、そういう事を言ってるのではありませんよ?」 (11/14-00:31:46)
: 「本当に良い人は、ただ外敵を駆逐するためだけに、それと戦うためだけの奴隷となるべき命を量産したりしませんからね」 (11/14-00:33:44)
シェリー : 「……なんですか、それ。……あなたみたいな人が言っても、ただの冗談にしか聞こえませんよ」 (11/14-00:34:54)
: 「そうであったら、よかったのですけれどね」 (11/14-00:35:33)
: 「その外敵と戦うには、人の命がいくつあっても足りない」 (11/14-00:36:11)
: 「一から兵を鍛えているだけの時間も足りない」 (11/14-00:36:27)
: 「それなら、産まれたそのときから戦うことのできる、新しい生物を創ればいい」 (11/14-00:37:09)
: 「反旗を翻されぬよう、その魂に最初から従属心を刻んでおけば安心だ」 (11/14-00:38:07)
: 「――合理的だとは思いませんか?」 (11/14-00:38:47)
シェリー : 「…………」 真逆だが、やっている事は何処かの宗教家たちと一緒だ。寒気がして、両腕で震える身体を抱える。 (11/14-00:39:27)
: 「私は、そう思いました」 (11/14-00:39:34)
シェリー : 「……嘘を、つかないでください」 (11/14-00:39:53)
: 「嘘だと思いますか?」 真偽判定には抵抗しませんよ。 (11/14-00:40:19)
シェリー : 「……そんな事をする人が、こんな所で冒険者をやっているはずも無ければ、そんな事を思う人が、わたしにこんな所で声を掛けてくる事なんて、ありませんよ」 (11/14-00:40:23)
: 「けじめですよ」 (11/14-00:42:19)
: 「そうまでしてしまったからには、せめて当初の目的は達せられなければならない」 (11/14-00:42:49)
: 「冒険者は、私にとって――そう、“最後”の戦いの場なのです」 (11/14-00:43:28)
シェリー : 「……仮にあなたの話がすべて本当だとするならば」 (11/14-00:44:40)
シェリー : 「――やっぱり、あなたは良い人だと思いますよ」 (11/14-00:45:03)
: 「……」 (11/14-00:45:33)
: 「それを言ったら、あなたの方こそ、ではありませんか?」 一瞬ぽかんとしてから、はっとなって言い出す。 (11/14-00:47:01)
シェリー : 「……そうでしょうか」 (11/14-00:47:36)
: 「さっきまで泣いていたくせに、妄言を垂れ流す初対面の人間を慰めるなんて、よほどの良い人ですよ」 (11/14-00:48:40)
: くすくす、と堪えきれず笑いが洩れる。 (11/14-00:48:51)
シェリー : 「……な、泣いてなんていません」 (11/14-00:49:14)
: 「――たぶん、あなたに声を掛けたのは、どこか共感できる部分があったからでしょうね」 (11/14-00:49:46)
シェリー : 「共感?」 (11/14-00:50:24)
: 「疎外感――いえ、違和感。異物感、ですかね?」 (11/14-00:51:16)
シェリー : 「…………」 (11/14-00:52:05)
: 「自分という存在の異物感。それが社会に紛れ込んでいる違和感」 (11/14-00:52:22)
: 「――それを感じている心に」 (11/14-00:52:50)
シェリー : 「……あなたは、勘の鋭い人ですね」 (11/14-00:53:10)
シェリー : 「あなたの考えた事は、概ね正しいです」 (11/14-00:55:36)
シェリー : 言いながら、ゆっくりと席を立つ。 (11/14-00:55:58)
: つられて立ち上がりはせず、視線だけで追う。 (11/14-00:56:48)
シェリー : 「わたしは、その違和感に耐えられず独りになって、異物感に耐えられずに此処へやって来た。今日わたしが此処に居たのは、そんな理由でした」 (11/14-00:58:06)
シェリー : 「あなたのような人に会えたのは、幸運だったかも知れません。多少、気が楽になりはしたと思います」 所詮一時しのぎではないが、今はそれでも気が安らぐから。 (11/14-00:59:20)
シェリー : 「ありがとうございました。今日は、もう休もうと思います。ヒルダさんが、部屋を空けておいてくれたそうなので」 (11/14-00:59:58)
: 「あなたは独りになってしまったのかもしれませんが、あなたのような人は1人だけではありません」 (11/14-01:00:19)
: 「傷の舐め合いのような格好ですが、縁があったら、またお会いしましょう」 小さく手を振る。 (11/14-01:01:05)
シェリー : 「……あなたは、やっぱり良い人ですね」 ほんの僅かだけ、口元に笑みを浮かべて会釈を返した。 (11/14-01:02:19)
シェリー : 「――わたしは、善い人にはなれても、良い人には、なれそうにありません」 小さくそう呟いて、階段を上がっていった。 (11/14-01:02:55)
SYSTEM >  様が退室しました。 (11/14-01:02:58)
: 「そうならなければならないほど、この世界は頑迷ではありませんよ」 足音も聞こえなくなった闇に向かって、そっと呟いた。 (11/14-01:04:26)
SYSTEM >  様が退室しました。 (11/14-01:04:29)
発言統計
シェリー68回46.3%2871文字55.8%
65回44.2%1799文字35.0%
ヒルダ8回5.4%309文字6.0%
 6回4.1%167文字3.2%
合計147回5146文字