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テラスティア大陸北西部リーンシェンク地方中部、アルセイン王国。
そこが、私たちの冒険の舞台です。
アルセインは、元々は魔動機文明時代にリーンシェンク一帯を統治したハイゼ王国の都市でした。
〈大破局〉時には蛮族の手に陥落、蛮都カルハランと改名され、近年に至るまで蛮族領グラシウスに占領されています。
転機は20年前、〈大破局〉時にこの地を守る為に最後まで蛮族と戦い戦死したアルセイン侯の子孫、ジョージ・グレアムが傭兵団を率い、周辺国の協力の元、〈カルハランの戦い〉にて、当時のグラシウス首領でありカルハランを統治していたトロールの王、“朱の暴君”ヴルガンドを打ち破った事に始まります。
大きなカリスマを持っていたヴルガンドが討たれた事により、グラシウスは混乱し、以後の戦いで敗戦を重ね、エーレ河以南へと大きく後退する事となりました。
これらの戦いにより名声を得たジョージ・グレアムはアルセインの復興と建国を宣言。周辺国も彼の功績への評価と、グラシウスへの抑えの意味からもこれを認め、独立国としてアルセイン王国が誕生することとなります。
現在は勢力拡大の最中であり、様々な地域から人が流入してきています。
北部にフォルディール山、ミュゼスの森、南部にはシーア河と三角州を抱え、肥沃な土地を有しています。
その為に開拓が盛んであり、慢性的な人手不足によって、魔物の排除や物資調達、護衛など、様々な面で冒険者が重宝されています。
また、ハイゼ王国時代の各都市の遺跡や、戦乱によって荒れた地などから魔法文明の遺跡が発見されることがままあり、それが冒険者を引き付ける要因ともなっています。
アルセインは魔動機文明の遺跡を下地にした城郭都市です。
王城を中心として広がる丘に、行政区、高等区、旧市街が存在し、内側の地区に行くに連れて階段状に高台となっています。さらにその丘の周りには新市街が広がっています。これらの地区と地区との境界は強固な防壁で区切られています。現在、人口の増加に伴い新市街の外に新区を拡張しつつあり、その外側にも第五壁を建設中です。
豊富な水量を誇るエーレ河の支流、シーア河から用水路を引いており、水不足に陥る事はまずありません。
蛮族がカルハランと改名し占領していた時期も、インフラ基盤、特に上下水道には大きな損害はなく、アルセイン建国後、マギテック協会がインフラの復旧維持に尽力したおかげで衛生環境は良好です
建築物に関しては、蛮族の手による改造が入っていたものが多く、その殆どが建てなおす事を余儀なくされましたが、これが逆に合理的な都市計画を可能とし、現在は魔動機による街灯が立ち並ぶ整然とした石畳の街並みが広がっています。
税金を納めれば個人宅に上水道を引く事も可能で、水道付き、風呂付きの住宅は成功者のステータスになっています。
今後も発展が期待される街であり、移住者は後を絶ちません。
もちろん、この都市以外にも、周辺地域には開拓され出来た村や町が多数存在します。
アルセインの政治形態はザルツ地方のルキスラ帝国を参考にしていると言われています。
王政であり、政務は最終決定権を持つ王を筆頭に、軍務、外務、内務、法務、財務、農水、文化教育などの各部門ごとに設けられた大臣を中心として執り行われています。
行政区にはその部門ごとの省庁が存在し、多くの役人達が業務に励んでいます。
貴族も存在し、その殆どは建国に尽力した国王配下の者やその子孫です。彼等の多くは要職についていますが、国家の役職については任命権や罷免権は王にあり、ただ単に貴族であれば要職につける訳ではありません。
むしろ優秀であれば一般人も取り立てられ、その事が多くの冒険者を引きつける要因の一つにもなっています。
また、大きな功績を挙げた者は新たに貴族や騎士となる事も可能です。
アルセイン国内では、時折蛮族――バルバロス――の姿を見かける事があります。
彼らはアルセインに対して何らかの貢献をし認められた者達で、名誉人族や準名誉人族といった扱いを受けています。
それ以外の者が、蛮族という事を隠して街に入った場合─そしてそれが発覚した場合─は、即座に捕縛、処刑されても文句は言えません。
また、他国では彼らの身分は保証されていません。国外に出る場合、国王か大臣が発行する手形が必要になります(そしてそれは当然容易に取得できるものではありません)。
アルセインには現在五本の〈守りの剣〉が存在しており、その全ては、国王ジョージが持ち込んだものと言われています。
その所蔵場所は秘密とされています。
アルセインだけではなく、リーンシェンク地方全体に言える事ですが、この地域は魔動機文明時代より人の流入が多く、多様な信仰が見られる土地でした。
〈大破局〉後もアルセイン王国が建国され地域が活性化し始めると各地から移住者が増加し、それに伴って様々な宗派が流入してくる事となりました。
そのため、リーンシェンク地方は第一の剣側の全ての神の影響圏内となっています(それが異端で無い限り)。
アルセイン奪還のためにジョージが率いてきた傭兵たちの中には、多くの冒険者がいました。
建国後、その何割かは国軍に編入されましたが、多くの者はこの地で冒険者を続けることを希望しました。
生まれたばかりの国にあって、冒険者の活躍の場は非常に数多くあったのです。
そして、多くの冒険者を管理する必要が発生したため、冒険者ギルドが設立される事となりました。
冒険者ギルドの主な役割は、個人の等級(グレード)の審査と、各冒険者の店への依頼の斡旋です。
等級(グレード)とは、アルセインの冒険者ギルドが始めた制度であり、その冒険者がどの程度の実力を持つのかを分かりやすくするために、それぞれが持つ宿のエンブレムに、名前と、それぞれの実績に応じた数の星形の刻印が為される、というものです。
(ちなみに、この星の数は「ハウスルール:冒険者の等級(PCグレード)」に記されている★の数と連動しています)
この「星」の数は、それなりの権威を発揮します。
例えば、初めて訪れた宿でも仕事の斡旋を優遇してもらえたり、重要度の高い仕事を名指しで依頼されたり、といったことです。
この制度は、今ではリーンシェンク地方全体に浸透しており、各国の冒険者ギルドの間で、ある程度の情報共有が行われています。
なお、星の形は各国のギルドによって、それぞれデザインが違います。
※下記の3つの宿は、PCが主に利用する斡旋所として設定されています。各PCが部屋を取っている宿は、これ以外でも構いませんし、定宿を持たないとしても構いませんが、最低限、これらに通えるような設定を心懸けてください。
元冒険者のリルドラケン、マルコ・ライモンドが店主を務める冒険者の店です。
面倒見の良い性格の彼は、駆け出しの冒険者にこなしやすい調達や配達といった依頼を、地縁の商人や職人から優先的に回して貰っています。
細々とした依頼は実入りは少ないですが、場数を積ませてやる事が何よりも後進の育成に繋がると考えているのです。
エンブレムの図案は“空を舞う青い鱗の飛竜”を象ったもので、元々は店主がモデルだったのですが、現役を退いてから丸々と肥え太ってしまった今の彼とは似ても似つかないと評判です。
元傭兵で国軍の創立にも貢献した歴戦の勇士アーロン・スヴェンソンが店主の冒険者の店です。
現役時代の同僚や部下などの伝手から、討伐や拠点防衛といった荒事の依頼には事欠きません。
仕事を求めてやってくる冒険者達も荒くれ者揃いで喧騒の絶えない店ですが、店主の隻眼が睨みを効かせている為か刃傷沙汰にまではならないようです。放置しておくと店主が乱入してくるとの噂もありますが……。
エンブレムの図案は“交差する朱塗りの矛槍”を象ったもので、店内にはその原型と思われる現物が飾られています。
年齢・経歴不詳の美貌の女主人、ヒルダが切り盛りする冒険者の店です。
この地方の歴史に造詣が深い女将の元には、多くの探し屋が遺跡の情報を売り込みにやって来ます。
遺跡絡みの仕事で魔術師ギルドやマギテック協会とは浅からぬ繋がりが出来ており、協力を要請される事もあります。
エンブレムの図案は“黄金色の林檎が実った樹木”を象ったものです。
店名の由来は店の看板メニューである蜂蜜林檎酒(通称〈黄金の蜂蜜酒〉)から来ているとされています。
同国首都近郊に聳え立つ三本の塔、それがアルセイン魔術師ギルドです。
このギルドの歴史は浅く、成立は王都アルセインのそれと同時期です。
というのも、アルセイン奪還に協力した外様の魔導師たちが、代価として要求したのがこの土地だったのです。
彼らは大量の外貨(ガメルはガメルなのですが)を保有しており、瞬く間に三本の塔を築くと、王の許しを得て魔術の振興に励みました。
その後、創設者である3人の魔導師はリーンシェンク地方を去りましたが、三本の塔と、彼らの伝えた魔術は残りました。
他ならぬ外部から教えを受けた、という経緯によってか、アルセイン魔術師ギルドは、他国のギルドと比べても非常に開放的です。
事実、市民の間では「マギテック協会の魔術版」ぐらいに認識されています。
もっとも、習得難度は魔動機術の比ではありませんから、専ら「魔術の力や知恵を借りる」ことが、ここを訪れる市民の主たる目的のようですが……。
※魔術師として一定の実績を修めた者ならば、ここで3人の始祖が残していった魔術の秘奥、すなわち【トリスマギウス魔導新式】を垣間見ることもできるでしょう。
首都を横切る運河と内堀の間にそびえ立つ巨大な方形の建造物、それがマギテック協会アルセイン支部です。
アルセイン王国成立以降、首都の復興と整備に多大な貢献を果たし、現在でも都市機能の維持・充実に務める同組織ですが、支部成立に至るまでは紆余曲折がありました。
リーンシェンク地方で最大規模の協会支部はスティアナ共和国に存在しますが、ジョージ・グレアムが“朱の暴君”討伐に向けて挙兵した際、同支部は彼の協力要請に応じませんでした。これを「政治的意向による協会への不当な圧力」「協会の基本理念への背信行為」と嫌った一部の協会員が離反、戦局さえ定かではないアルセインへ赴きました。
彼らは戦力としては乏しく〈カルハランの戦い〉でも大きな戦果をあげる事は出来ませんでしたが、アルセイン奪還後、昼夜寝食を忘れて都市の整備事業に尽力し、復興の立役者と呼ばれるまでになりました。
ハイゼ王国期の遺跡でもある同都市の優れたインフラ技術に直に触れ、復元と整備に携わった貴重な経験は研究報告書として纏め上げられ、ルキスラのマギテック協会本部に提出されました。その研究成果が大いに評価された結果、彼らはようやくマギテック協会アルセイン王国支部としての独立を果たすことになったのです。
このような背景から、王国成立期からの古参市民から多大な評価を得ているアルセイン王国支部ですが、都市機能が一定の水準を迎えた昨今では、その才能を持て余し気味の若手の協会員がおかしな研究に手を染めて騒ぎを起こす事もあり、新規の入植者や若年層の中には厄介者と陰口を叩く者もいます。
アルセイン南西に位置する、王国“公認”の蛮族の集落です。
アルセインの南方、エーレ河本流の手前に存在する、アルセイン王国に属する要塞都市です。
〈カルハランの戦い〉以後、グラシウスに対する監視と抑えの役割を果たすべく建造されました。
エーレ河以南は未だに人族の支配下に無く、レガロ砦はアルセインにおける対蛮族の最前線です。
その性質上、軍人や傭兵が多数駐留しており、この街の冒険者の店には荒事の依頼が多く舞い込みます。
彼らを相手とした商売も賑わっており、意外にも活気のある街となっています。(近年は大規模な戦いが起こっていないということもありますが)
リオーネからやってきた蛮族もそれなりに見られ、アルセインの名誉人族となった者はこの街で武功を挙げた者が殆どです。
アルセイン王国の首都からシーア河を下った河口部に存在する海洋都市です。
その成立は魔法文明時代まで遡り、“白壁の港”と言う異名の元となった中央部は、魔法で強化された白い珊瑚礁を建材とした美しい建物が立ち並び、来る者を魅了します。
大破局の頃から蛮族に支配されていましたが、〈カルハランの戦い〉で解放され、アルセイン王国に編入されました。
主な産業は漁業と周辺の遺跡からの発掘物、そして海洋交易で、スティアナとは水面下で対立しています。
特に最近になっての海軍の充実は目覚しく、未だに蛮族の勢力が強く、未知の生物が多数生息するエデオラ湾への進出・開拓が少しずつ始まっています。
都市の執政長は、〈カルハランの戦い〉の時にスティアナからやってきたマギテック協会員であるミーシャ・バガナッツが勤めています。